『竹取物語』第2章は、かぐや姫に会いたがる男たちの話です。ただ、「美しい姫に大勢が求婚した」で済ませると、なぜ姿を見るだけでも難しいのか、手紙に返事がないことが何を意味するのかが見えません。第1章で姫が帳の内から出されなかったことを思い出し、男たちが何をして、どこで行き詰まったかを追いましょう。
なぜ「かぐや姫を見たい」が事件になるのか
男たちが姫を好きになるきっかけは、本人と話したことではなく「音に聞き」――評判を聞いたことです。身分の高い者もそうでない者も会いたがるのに、家のすぐ近くにいる人さえ簡単には姫を見られない。第1章の「帳の内よりも出さず」という扱いが、ここで求婚の障壁になります。
これは「平安時代の女性は全員、顔を見せなかった」と一般化するための描写ではありません。この物語では、姫が人目に触れにくい場所で大切に育てられていることが大事です。古典文学では、垣や御簾の向こうの人物をちらりと見る「垣間見」が恋の始まりとなる作品もあり、「見る」という行為自体が物語を動かします。

※第2章の場面をもとにした、生成AIによる絵巻物風イメージです。実在の絵巻・史料の画像ではありません。
「よばひ」は、現代語の「夜這い」と同じ意味?
本文では、男たちは夜も眠らず、暗闇で家の周囲をうろつき、隙間から姫を見ようとします。その直後に、そんな時から「よばひ」と言うようになった、という調子の説明が入ります。夜に這い回る行動と「よばひ」という語を結びつけた、物語の言葉遊びとして読むところです。
一方、「よばひ」は古語としては求婚する・言い寄ることを表し、「呼ばふ」に関わる語です。作中の説明をそのまま語源の事実にせず、本文のユーモアと語の意味を分けましょう。現代語の「夜這い」のイメージだけを当てはめると、この章で描かれる求婚の筋を取り違えます。
文と和歌を送るのに、返事がないということ
最後まで通う五人は、文を書き、恋の苦しさを歌にして送ります。しかし姫は「返事もせず」「返しもせず」。ここで「返し」は和歌に対する返歌です。手紙と和歌のやり取りが恋愛の重要な表現手段となる文学の世界では、返歌の有無にも意味があります。
もちろん、歴史上のすべての恋愛が同じ順序だったという話ではありません。この作品の男たちは、会えないから文や歌を送り、それでも応答がない。行動が次々に空振りすることが、男たちの熱心さと姫の距離を同時に描いています。国立国会図書館も、平安貴族の和歌を贈り合う文化を紹介しています。
なぜ最後に残ったのが「五人」なのか
成果のない求婚に、多くの男たちは来なくなります。それでも通い続ける者として、二人の皇子、右大臣、大納言、中納言の五人の高い身分の人物が列挙されます。物語は初めから「五人だけが求婚した」とは書いていません。大勢が来た → 多くが去った → 五人が残ったという減り方を押さえると、次章の難題がなぜ五人に出されるのかが分かります。
さらに五人は寒い霜月・師走も、暑い水無月も通います。ここで暦の単語を全部暗記することより、季節が変わっても求婚が続くほど時間が経ったと読むことが大切です。
翁と姫は、結婚をめぐって何を違えている?
五人は翁に娘をくださいと頼みますが、翁は自分が産んだ子ではないから、姫は自分の心のままには従わないと返します。「父親が一人で相手を決めた」わけではないことを、まず本文の言葉から確認しましょう。
その後、翁は自分も七十歳を超え、いつまで生きるか分からないと話し、姫に結婚を勧めます。一方の姫は、相手の「深き心」「深き志」を知らないまま応じて、後から心変わりされたら困ると考えています。どちらかが単に頑固なのではなく、翁は娘の将来を案じ、姫は相手の誠意を知りたがるという問いの違いが次章を動かします。
ここで姫は、五人の中で自分の見たい物を持って来た相手を選ぶ案を出します。次の第3章では、言葉や身分では測れない「志」を、行動で示させる難題へと話が移ります。
第2章の文法|訳を決める前に形を拾う
章全体の意味を読めたら、短い原文表現に戻って形を見ましょう。助動詞の一覧を最初から全部当てはめる必要はありません。
活用を先に練習したい場合は、「まじ」の形と覚え方、「まほし」の形と覚え方の記事とテンポゲームも利用できます。
読んだ後に3問だけ確認
答えを見る前に、本文のどの行動・表現を根拠にしたかを考えてから青い欄をタップしてください。
問1:第1章で姫を帳の内に置いたことは、第2章の何につながる?
問2:「見るまじきものを」の「まじき」は何形で、ここではどんな意味?
問3:かぐや姫が五人の身分や訪問回数だけで結婚相手を決めないのはなぜ?
第1章と第2章をつないで読む
第1章では、翁の家の内側で大切に育てられた姫が、名付けと祝いを経て世間に知られました。第2章では、その評判で男たちが集まっても、姫本人には簡単に近づけません。「見たい」という願いから「相手の心を確かめたい」という姫の条件までをつなぐと、第3章の難題は唐突な気まぐれではなく、前の場面から生まれた展開として読めます。
本文・時代背景の参照:バージニア大学 Japanese Text Initiative『竹取物語』(本文の照合。底本・表記による違いに注意)/国立国会図書館「文字絵 始まる」(平安貴族の和歌贈答)/水谷隆「古今和歌集の『垣間見』の歌に関する考察」(2025年、論文要旨)。本文の説明・確認問題はとだ塾による作成です。画像を貼る場合、本文の補助として生成AI画像であることを明示しています。