「塾には通っているし、本人なりに勉強もしている。でも、なかなか成績につながらない」
そんなとき、勉強時間が足りないのかな、と考えることは自然だと思います。もちろん、ある程度の練習量は必要です。ただ、生徒の勉強を横で見ていると、量を増やす前に一度確認してみたいことがあります。
それは、その子にとっての「できた」が、どんな状態なのかということです。
「分かった」と「自分でできる」は、少し違います
問題を間違えて、解説を読む。先生に説明してもらって、「ああ、そういうことか」と納得する。
ここまでは、とても大切です。ただ、そこで勉強を終えてしまうと、実はまだ自分の力では解けないまま、ということがあります。
とだ塾でも、説明した直後に「じゃあ、もう一回何も見ずにやってみようか」と同じ問題を解いてもらうことがあります。
すると、ほんの1分前に説明を聞いた問題でも、手が止まってしまうことがあります。これは決して珍しいことではありません。
1分後に自分で再現できないものが、1週間後に自然とできるようになっているとは考えにくい。
だから私は、「説明を理解できたか」だけでなく、「何も見ずに、もう一度自分でできるか」まで確かめることを大切にしています。
勉強の仕方そのものが、ミスを増やしていることもあります
成績が伸びにくい原因は、難しい問題が分からないことだけではありません。普段のちょっとした勉強の仕方に表れていることがあります。
例えば数学で、途中式を書かずに頭の中だけで計算しようとする子がいます。
暗算そのものが悪いわけではありません。ただ、自分がどこまでなら安全に頭の中で処理できるのかをまだうまく把握できていないと、符号や移項などで同じミスが繰り返されます。
そんなときは、「途中式を書きなさい」と叱るよりも、どう書けば自分が間違いにくくなるのかを一緒に探した方がいいと思っています。
英語でも同じです。
英文の語順を間違えたとき、間違った単語同士を矢印で入れ替えて、それで直しを終える子がいます。
もちろん、どこを間違えたか確認することには意味があります。ただ、本当に大切なのは、次に同じような文が出てきたときに正しい順番で書けることです。
そこで一度、答えを隠して、英文を最初から書き直してみる。それだけでも「分かったつもりだったのか」「自分で再現できるのか」が見えやすくなります。

「できる」のハードルは、人によって違います
「この問題は分かっています」と言っていても、その「分かっている」の中身はさまざまです。
- 答えを見れば分かる
- ヒントがあればできる
- 時間をかければできる
- 何も見ずに一人でできる
- 似た問題でも同じ考え方を使える
どれも学習の途中では必要な段階です。だから、「答えを見ないとできないからダメ」という話ではありません。
ただ、今どの段階にいるのかを本人も周囲も分からないまま先へ進むと、「勉強したはずなのにテストではできない」ということが起こりやすくなります。
教育心理学では、自分がどの程度理解できているかを確かめたり、やり方を調整したりすることは、メタ認知や自己調整学習と関係するものとして研究されています。
難しい言葉ですが、勉強する子どもの側から考えると、
「自分はいま、本当にできるようになったかな?」
と一度確かめることに近いと思います。
だからといって、全員に同じ勉強法を当てはめるわけではありません
では、セルフチェックをさせれば全部解決するのかというと、私はそうは思っていません。
途中式を少し丁寧に書くだけで安定する子もいます。英文を毎回最初から書き直した方がいい子もいます。問題の難易度を大きく下げた方がいいこともありますし、単純に練習量が足りていないこともあります。
授業中に眠くなってしまい、90分のうち十分に取り組めている時間が短くなっているなら、そこを考える必要もあります。
大切なのは、「成績が上がらない子にはこの方法」と最初から決めることではなく、実際にその子が勉強しているところを見ることだと思っています。
必要なら、問題のレベルを思い切って下げてもいい
「分かっているはずなのに間違える」という子の場合、基礎的な処理にまだ大きな負荷がかかっていることがあります。
例えば、方程式を解くたびに符号や分数の処理に頭を使っていたら、その先の文章題について考える余裕は小さくなります。
そんなとき、難しい問題を頑張り続けることだけが正解ではありません。
必要なら問題を簡単にして、基本的な処理を何度も繰り返す。「考えれば何とかできる」から、「これはほとんど迷わずできる」まで持っていく。
一見すると遠回りに見えますが、その方が次の内容を考える余裕が生まれることがあります。
成績が上がらないときは、「何時間やったか」以外も見てみる
勉強量は大切です。たくさん問題を解くからこそ、同じところで何度も間違えていることに気づける場合もあります。
ただ、何も残らないやり方のまま量だけを増やしてしまうと、本人もしんどくなります。
だから、成績が上がらないときには、
- 間違えたあと、どう直しているか
- 説明を聞いたあと、自分でもう一度解いているか
- 途中式やノートの書き方が自分に合っているか
- 今取り組んでいる問題の難易度が合っているか
- 次に同じ問題が出たときのことまで考えられているか
こうしたところも一緒に見てみてほしいと思います。
勉強が苦手な子に、最初から自分一人でここまで分析して改善することを求めるのは難しいものです。
だからこそ、とだ塾では問題の答えだけではなく、その問題に取り組んでいるときの様子まで見ることを大切にしています。
「もっと頑張ろう」で終わらせず、その子が次に少しやりやすくなる方法を一緒に探していく。それが、成績が伸び悩んでいるときにまずできることの一つだと考えています。