助動詞「べし」には、
- 推量
- 意志
- 可能
- 当然
- 命令
- 適当
という6つの代表的な意味があります。
数が多いので、語呂合わせだけで覚えると実際の文章で迷います。判別では、主語の人称・誰への発言か・可能不可能の文脈・当然性を見るのが有効です。
接続は終止形
「べし」は基本的に終止形に接続します。ただしラ変型活用語には連体形に接続します。
まず助動詞として正しく切り分け、その後に意味を考えます。
形容詞型に活用するので、「べから・べく・べし・べき・べけれ」のような形でも現れます。
三人称なら推量をまず考える
主語が第三者で、未来や未確定のことを述べているなら「〜だろう」という推量が有力です。
- かの人も来るべし。
なら「その人も来るだろう」と考えられます。
話し手自身の行動方針ではないため、意志より推量が自然です。
一人称なら意志が有力
主語が話し手自身で、「自分は〜しよう」と決めている文なら意志を考えます。
- 我は都へ帰るべし。
文脈によって「私は都へ帰ろう」という意志になります。
「む」と同じく、人称が意味判別の強い材料になります。
「できる」なら可能
能力や実現可能性について述べているなら可能です。
- この川は渡るべし。
文脈によって「この川は渡ることができる」と読めます。
可能かどうかを議論している場面、打消の「べからず」と対比できる場面などでは候補になります。
道理・義務なら当然
「当然そうなる」「〜するはずだ」「〜しなければならない」という道理を述べる場合は当然です。
- 人は約束を守るべし。
なら「人は約束を守るべきだ」と考えられます。
客観的な規範・道理に近いのが特徴です。
相手に強く求めれば命令、勧めなら適当
二人称に対して「〜せよ」と強く求めるなら命令です。
一方、「〜するのがよい」という助言・勧めなら適当です。
同じ二人称でも強さが違うため、会話全体の調子を見る必要があります。
- 急ぎ参るべし。 → 文脈によって命令
- 今は休むべし。 → 文脈によって適当
というように判定します。
最短の判別手順
- 主語が一人称か → 意志を検討
- 三人称の未来予測か → 推量を検討
- 「できる」かどうかの話か → 可能
- 道理・義務か → 当然
- 相手への強い指示か → 命令
- 相手への助言か → 適当
この順で候補を作り、最後に現代語訳が文脈に合うか確認します。
似た判別法は古典文法「む」の見分け方にも使えます。反実仮想を含む推量系助動詞は「まし」の見分け方で整理しています。
「当然」と「適当」は誰のための判断かを見る
「〜べきだ」と訳せる文では、当然と適当が紛らわしくなります。ここでは、その判断が一般的な道理を述べているのか、特定の相手に行動を勧めているのかを見ると区別しやすくなります。
「人は約束を守るべし」のように、誰にでも当てはまる規範を述べるなら当然が有力です。一方、「病みたれば今日は休むべし」のように、相手の状況を見て「休むのがよい」と助言するなら適当が自然です。
命令との違いも同じです。命令は相手に行為を求める力が強く、適当は「そうするのがよい」という判断に重点があります。選択肢で迷ったら、一般原則か・助言か・強制かの三段階で読み分けてください。
確認問題
次の「べし」の意味を考えてください。
- 明日は雨降るべし。
- 我はここに残るべし。
- この道より行くべし。
- 子は親を敬ふべし。
文脈が通常なら、
- 推量
- 意志
- 可能・適当など文脈を確認
- 当然
を候補にします。
3のように短い文だけでは複数の解釈が可能なので、実際の問題では前後を必ず読みます。
まとめ
「べし」は6意味を全部同時に考える必要はありません。
主語の人称、可能性、道理、相手への働きかけを見ると候補が絞れます。
古典文法では、意味一覧を暗記した後に判定順序を持つことが得点につながります。
この記事は文部科学省、国立国語研究所、公立高校の公開古典文法資料を参照し、例文・問題は独自に作成しています。