助動詞「けり」には、大きく
- 過去
- 詠嘆
の2つの意味があります。
形は同じなので、判別は文脈で行います。特に、物語の地の文で過去の出来事を語っているのか、話し手が今気づいたことに感動しているのかを見るのが基本です。
接続は連用形
「けり」は連用形に接続します。
- 行き+けり
- 見+けり
- あり+けり
のように付きます。
活用はラ変型で、けら・○・けり・ける・けれ・○と整理されます。
文中では「ける」「けれ」の形でも現れるので、終止形の「けり」だけを探さないようにしてください。
物語の地の文なら過去が基本
出来事を順に語っている地の文では、「〜た」「〜たそうだ」と過去を表すことが多くなります。
- 昔、男ありけり。
なら、「昔、男がいた」と過去の出来事を述べています。
物語の冒頭や経過説明で「けり」が出たら、まず過去を候補にするのが自然です。
詠嘆は「今気づいた」感覚
詠嘆は「〜だなあ」「〜ことだ」と、話し手が新しく気づいたことや強く感じたことを表します。
たとえば景色を見て、
- 花は咲きにけり。
と感動しているなら、「花は咲いたのだなあ」のような詠嘆が含まれます。
単なる過去の報告ではなく、目の前の事実への発見・感動がポイントです。
和歌では詠嘆を強く疑う
和歌の末尾などで「けり」が使われる場合は、詠嘆になることが多くあります。
和歌は出来事を事務的に報告するより、発見や感情を表現する場面が多いためです。
ただし「和歌なら絶対詠嘆」と機械的に決めず、その歌が何を感じているか確認してください。
会話でも気づきなら詠嘆
会話文の中で、話し手が今初めて知った・気づいたことを言うなら詠嘆が有力です。
「なるほど、そうだったのか」のような発見を伴う場面です。
反対に、会話でも単に昔の出来事を説明しているなら過去になりえます。
「けり=過去」とだけ覚えると落とす
現代語訳で「〜た」と訳せる場合でも、詠嘆のニュアンスを含むことがあります。
そのため、
- 地の文か、会話・和歌か
- 過去の事実説明か
- 今の発見・感動か
- 文末で強い気持ちが出ているか
を見るのが実戦的です。
完了との違いを整理したい場合は古典文法「つ」と「ぬ」の違いを参照してください。同形判別では「なり」の断定と伝聞・推定も役立ちます。
過去と詠嘆が迷うときは「情報が新しいか」を見る
判別で最後まで迷ったら、その内容が話し手にとってすでに知っている過去の情報なのか、今その場で新しく認識した情報なのかを確認します。
たとえば「昨日、友が来たりけり」と昨日の出来事を順に説明しているなら、話し手は出来事を回想しており過去が自然です。一方、探していた物を見つけて「ここにありけり」と言うなら、「ここにあったのだなあ」と今の発見が前面に出るため詠嘆が有力です。
また、和歌で過去の出来事を題材にしていても、歌の中心がその出来事への現在の感慨なら詠嘆を含むことがあります。逆に会話文だから自動的に詠嘆になるわけでもありません。
したがって、形式だけではなく、語り手の時間軸が過去を説明しているのか、現在の気づきを表しているのかまで見ると判定が安定します。
確認問題
次の「けり」は過去・詠嘆のどちらが有力か考えてください。
- 昔、この里に翁住みけり。
- 月はいと明かかりけり、と空を見上ぐ。
- 長く旅をしけり、と昔を語る。
- ああ、ここにありけり。
基本的には、
- 過去
- 詠嘆を検討
- 過去
- 詠嘆
です。
まとめ
「けり」の判別は、形ではなく語り方を見るのが中心です。
- 過去の出来事を叙述 → 過去
- 今の発見・感動 → 詠嘆
- 和歌・会話の感動場面 → 詠嘆を強く検討
という順で考えてください。
誰が、いつの視点から、その出来事を語っているかを意識すると、過去と詠嘆の違いが見えやすくなります。
この記事は文部科学省、国立国語研究所、公立高校の公開古典文法資料を参照し、例文・問題は独自に作成しています。