定期テストの結果を見て、5教科とも平均点より下だった。
そんなとき、保護者の方からすると「次は5教科全部、せめて平均点くらいまで上げたい」と考えるのは自然だと思います。
でも私は、最初から5教科全部を同じように頑張らなくてもいいと考えています。
むしろ、今まで勉強がうまくいっていなかった子ほど、まずは1教科に絞って、「こうやったら前よりできるようになるんや」という経験を作る方が大切なことがあります。
結論から言うと、5教科とも平均点以下なら、まず「これなら少し頑張ってもいい」と思える教科か、将来必要になりそうな教科を1つ選ぶ。
そして点数だけではなく、間違え方、勉強の仕方、復習の仕方まで見直していきます。
5教科全部をやるのは、中学生にとってかなり負荷が大きい
中学生になると、英語・数学・国語・理科・社会を同時に勉強することになります。
もちろん高校入試では複数教科が必要です。
ただ、だからといって、今この瞬間から5教科全部を同じ熱量で立て直さなければいけないとは思いません。
そもそも大学受験まで視野に入れると、入試方式によって必要な教科数はかなり変わります。国公立大学の受験が大変な理由の一つも、扱う教科数が多いことです。
5教科を同時に勉強するというのは、大人が思っている以上に負荷があります。
全部が苦手な状態なら、まず必要なのは「全部やれ」ではなく、どこに力を集中するかを決めることだと思っています。
最初の1教科はどう選ぶ?
私は、まず本人に聞きます。
「これなら、まだ頑張ってもいいと思える教科はある?」
これがあるなら、かなり大事にします。
本人が少しでも取り組む気になれる教科で、勉強の仕方を覚える方が進みやすいからです。
もう一つは、将来的に必要になりそうな教科です。
特に希望がなければ、私は英語と数学の優先順位を高めに考えることが多いです。
英語は、将来の選択肢を残しやすい
大学入試では、英語を使う入試方式がかなり多くあります。
もちろん進路や方式によって例外はありますが、まだ将来がはっきり決まっていない中学生なら、英語をある程度使える状態にしておくことは、選択肢を残す意味でも大きいと思います。
英語は積み重ねも強いので、短期的な点数だけではなく、少しずつ語彙や文の構造を扱える状態を作っていきたい教科です。
数学は、次の単元で入り直せることがある
数学は積み重ねの教科ではあります。
ただし、定期テストという単位で見ると、単元が変わることで前回より入りやすくなることがあります。
たとえば前の単元でかなり苦戦していても、次の単元では扱う内容が変わり、そこで改めてスタートを切れることがあります。
だから、「次のテストで少し結果を変えてみたい」という場合には、数学は狙いやすいことがあると思っています。
ただし、数学も小数・分数・符号などの基礎計算が強く邪魔しているなら、そこは一度戻って整えます。
理科・社会・国語は、本人の目的で変わる
理科や社会は、範囲によっては覚えたことが比較的すぐ点数につながることがあります。
一方で、本人がまったく興味を持てない状態なら、「覚えなさい」だけではかなり退屈な作業にもなります。
国語は、私はかなり重要な教科だと思っています。
文章を読んで、自分で調べて、自分で学ぶ力の土台になるからです。
ただ、国語の読解力は「2週間で一気に20点上げる」というような即効性を求めにくい面があります。すぐに成績を上げたがっているということなら後回しになりますし、
自分で勉強できる読解力を長期的につけたいという目的なら、国語を最初に選ぶこともあります。
答案だけ見ても、「何から直せばいいか」は分からないことがある
5教科とも点数が低かったとしても、原因は同じではありません。
定期テストの答案はもちろん見ます。
でも、それだけで判断するのは難しいことがあります。
実際に問題集をその場で解いてもらうと、いろいろ見えてきます。
問題文を最後まで読めているか。分からない問題でどれくらい止まるか。答え合わせのあとに何をしているか。インプットばかりになっていないか。そもそも集中が続いているか。
場合によっては、勉強方法より先に、生活習慣や睡眠、授業中の過ごし方を考えた方がいいこともあります。
また、予定が変わることが苦手なのか、分からない状態そのものに強くストレスを感じるのか、失敗を人に見られるのが嫌なのか。
こういうことは本人自身もまだうまく説明できなかったり、言いたくなかったりします。
だから私は、一度の面談や一回のテストだけで「この子はこういうタイプ」と決めない方がいいと思っています。
少しずつ一緒に見ていく必要があります。
共通してやりたいのは、「できていないところの見える化」
原因は人それぞれですが、かなり共通してやりたいことがあります。
それは、何ができていなかったのかを、本人にも見える状態にすることです。
たとえば問題を間違えたら、ただ赤で正しい答えを書いて終わりにしない。
「計算ミス」だけで済ませない。
できれば、
- 何を知らなかったのか
- どこで考え方を間違えたのか
- 次に同じ問題が出たら何に気をつけるのか
を、自分の言葉で整理してもらいます。
これは「反省文を書け」という意味ではありません。
自分の勉強を、自分の問題として見られるようにするためです。
「できないところがある」ことは、悪いことではない
ここはかなり丁寧に伝えたいところです。
分からないことがある。戻る必要がある。前に習ったことを忘れている。
そんなことは普通にあります。
それ自体を恥ずかしいことにしてしまうと、本人はできないところを見せたくなくなります。
すると、分からないのに「分かった」と言ったり、答えを見てできたことにしたり、間違いを隠したくなったりします。
私が問題だと思うのは、できないことがあることではありません。
改善する場所が分からないまま放置されることや、分かっているのに何度もそのままにしてしまうことです。
だからまず、「ここができていないね」と見えるようにして、「じゃあ、どこからやり直そうか」と設計し直せばいい。
1教科に絞る目的は、「一発で点数を上げること」だけではない
1教科に絞るというと、「まず得意科目を作って、点数を一気に上げて自信をつけさせる」という話になりがちです。
もちろん、それでうまくいく子もいると思います。
一度点数が大きく上がって、「やればできる」と思えることもあります。
ただ私は、即効性のある勉強に少し懐疑的です。
一回だけ点数がガツンと上がっても、次のテストで同じようにいかなかったときに、「やっぱり自分はダメなんだ」と戻ってしまうことがあります。
だから私が1教科に絞りたい一番の理由は、別のところにあります。
一つの教科で、「できなかったところを見つける → やり直す → もう一度自分でできるか確かめる」という勉強の流れを身につけるためです。
この流れが分かれば、理科でも社会でも英語でも、少しずつ応用できます。
5教科を同時に教えるより、まず1教科で「勉強ってこうやってできるようにしていくんや」と実感してもらう。
その方が中長期では意味があると思っています。
点数が上がらない子に多いのは、「やりっぱなし」
横で勉強を見ていると、かなり多いのがこれです。
問題を解く。
丸付けをする。
間違っていたら赤で答えを書く。
そして次のページへ行く。
これだと、「間違いを確認した」だけで、「次に自分でできる状態」にはなっていないことがあります。
大切なのは、答えを見たあとに、一度閉じて、自分で思い出してみることです。
もう一度同じ問題を解く。説明を見ずに手順を言ってみる。英語なら、間違えた文を何も見ずにもう一度作ってみる。
学習研究では、このように覚えた内容を自分で取り出す練習を retrieval practice(想起練習)と呼びます。
研究レビューでも、ただ読み直すより、思い出そうとする練習が長期的な保持に有効であることが繰り返し示されています。
参考:McDermott (2021), Practicing Retrieval Facilitates Learning
参考:Dunlosky et al. (2013), Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques
「何で間違えたか」を自分で説明することにも意味がある
もう一つ、とだ塾で大事にしたいのが、間違いの理由を本人の言葉で整理することです。
数学の学習研究でも、自分で「なぜそうなるのか」を説明する self-explanation(自己説明)には、理解や手続きの学習を助ける効果があると報告されています。
ただし、何でも自由に説明させればいいわけではなく、何を説明するかをある程度こちらで絞る方が効果が出やすいという研究もあります。
参考:Rittle-Johnson, Loehr & Durkin (2017), Promoting Self-Explanation to Improve Mathematics Learning
だから、「感想を書いて」ではなく、
「何を知らなかった?」
「どこで判断を間違えた?」
「次は何を見たら気づける?」
くらいまで絞って聞く方がいいと考えています。
ノートまとめが悪いわけではない。でも時間は決めた方がいい
きれいにノートをまとめること自体が悪いわけではありません。
整理することで理解しやすくなる子もいます。
ただ、テストで点が取れていないのに、勉強時間のほとんどをノート作りに使っているなら、一度配分を考えた方がいいことがあります。
その子にとって今必要なのが、知識をまとめることではなく、実際に問題を解いて、思い出して、間違いを直す時間かもしれないからです。
ノートまとめは30分まで。そのあと問題演習をする。
そんなふうに時間を区切るだけでも変わります。
テスト2週間前なら、「取らない問題」を決めてもいい
テストまであと2週間しかない。
その状態で、5教科全部を最初から完璧にしようとすると、かなり苦しくなります。
そんなときは、その子が少し頑張れば身につけられそうなところと、今回は見なくていいところを分けることがあります。
100点を目指す必要はありません。
今の状態なら、まず30点を目指す。それでもいいと思います。
30点を目標にするなら、難しい応用問題は見ない。
基本問題の中でも、短期間で習得できそうな範囲を優先する。
「これは今回は捨てる」と決めることも、立派な学習設計です。
見なくていいものを決めるから、見るべきものに集中できます。
5教科平均点より、親子関係や生活の方が大事なこともある
保護者の方が「せめて5教科全部、平均点くらいは」と思う気持ちは分かります。
でも、その目標のために毎日親子で言い合いになり、本人が勉強そのものから逃げるようになってしまうなら、一度立ち止まってもいいと思います。
テストの点数は大切です。
進路に影響することもあります。
ただ、親子の仲が悪くなって、中学生の生活全部を犠牲にしてまで、次の一回の定期テストだけを上げることが最優先だとは私は思いません。
勝手な願いですが、子供には家は安らげる場所であって欲しいと思っています。
できないことや苦手なことを、安心して打ち明けられること。
分からないことがあったときに、隠さず見られること。
「弱い部分も受け入れてもらえる」
それは塾でもいいですが、まずは家族であって欲しいと思います。
そして塾で身につけてもらいたいのは、
間違えたときに、「怒られる」より先に「じゃあ次どうする?」と考えられること。
自分の状態を少しずつ自分で調整できること。
そういう力は、次のテストだけでなく、その先の勉強、人生にも残ります。
とだ塾では、まず1教科で「学び方」を作る
5教科とも平均点以下だからといって、5教科分の教材を一気に増やすとは限りません。
まず本人と話して、頑張れそうな教科、将来使いそうな教科、短期間で手応えを作れそうな教科を考えます。
そして実際に問題を解く様子を見ながら、
- どこで止まるのか
- 何を知らないのか
- どんな勉強に時間を使っているのか
- 丸付けのあとにやり直しているか
- 何も見ずにもう一度再現できるか
を確認していきます。
そのうえで、できていないところを見えるようにして、やることを絞ります。
5教科全部を一気に救おうとするのではなく、まず1教科で「自分はこうやってできるようにしていくんだ」という方法を作る。
それができれば、次の教科へ持っていけます。
全部やることより、「何をやるかを決められること」
定期テストが5教科とも平均点以下だったとき、焦って全部を埋めようとしたくなります。
でも、勉強時間も集中力も無限ではありません。
だから、全部やることより先に、
何を優先するか。
何を今回は見ないか。
何ができていないか。
次に自分でできるようにするには何をするか。
を決めることが大切です。
まず1教科でいい。
そこで勉強の仕方が少し分かったら、次の教科へ広げればいい。
5教科全部を平均点にすることより、自分の勉強を自分で立て直せるようになることの方が、長い目で見れば大きな目標だと思っています。