三角関数の加法定理
は、符号も項の順番も覚えにくい公式です。
しかし、単位円上の点を座標として見ると「角を足す=点を回転させる」という意味が見えてきます。
まずcos(α-β)を内積から作る
単位円上に、角αの点
と、角βの点
を取ります。
どちらも原点からの距離は1なので、ベクトルOA、OBの長さは1です。二つのベクトルのなす角はα-βです。
内積を「長さ×長さ×角のcos」で表すと、
です。
一方、座標から内積を計算すると、
です。
したがって、
が得られます。
βを-βに置き換える
cosは偶関数、sinは奇関数なので、
です。
先ほどの差の公式でβを-βに置き換えると、
が出ます。
「和のときマイナスになる」理由は、sin(-β)で符号が反転するためです。
sinの加法定理はcosから作れる
sinとcosには、
という関係があります。
これを使えばsin(α+β)をcosの差・和の公式へ変形でき、
が得られます。
つまりsinの公式も別物ではなく、単位円上の座標関係からつながっています。
加法定理は「回転後の座標」を表している
角αの点をさらにβだけ回転させると、角はα+βになります。
その点のx座標がcos(α+β)、y座標がsin(α+β)です。
加法定理の右辺は、回転前のx成分・y成分をβだけ回した後にどう組み合わせるかを表しています。
この見方を持つと、公式は「妙な掛け算の暗記」ではなく、回転による座標変換として理解できます。
回転として見ると右辺の組み合わせも説明できる
角αの点P=(cosα,sinα)をβだけ回転させることを考えます。x方向の成分cosαは、回転後にはx方向へcosβ倍、y方向へsinβ倍寄与します。一方、元のy成分sinαは回転するとx方向へは負向きにsinβ倍、y方向へはcosβ倍寄与します。
そのため回転後のx座標は
となり、y座標は
となります。
ここでx座標の式だけマイナスが入るのは、上向きのベクトルを反時計回りに回したとき、その一部が左向き、つまりxの負方向へ向かうからです。符号まで図形的な回転の向きに対応していると考えると、暗記した公式の符号を思い出しやすくなります。
2倍角・半角公式は加法定理から生まれる
加法定理にβ=αを代入すると、
や
が出ます。
つまり2倍角の公式は新しい別公式ではなく、「同じ角を二つ足した」だけです。さらにcos2αの式とsin²α+cos²α=1を組み合わせれば半角公式も作れます。
三角関数の公式が大量に見えるときは、加法定理を親となる公式として位置づけると暗記量を減らせます。
符号を間違えたときの確認法
cosの和の公式を忘れたら、α=β=90°を代入して確認できます。
左辺はcos180°=-1です。
右辺が正しい式なら、
0×0-1×1=-1
となります。もしプラスにしてしまうと1になり矛盾します。
公式を完全に思い出せなくても、特殊角を代入して符号チェックできます。
単位円の基本関係はsin²θ+cos²θ=1になる理由で整理しています。高校数学の別の「なぜ」記事は0乗が1になる理由も参照してください。
確認問題
加法定理を使ってcos75°を求めます。
75°=45°+30°なので、
です。
よって
となります。
まとめ
加法定理は、角度を足したときの単位円上の座標を求める公式です。
特にcosの差の公式は、単位ベクトル同士の内積を「座標」と「なす角」の二通りで表すと自然に出てきます。
公式を覚える前に、sinとcosは円上の点のy座標・x座標であるという土台を持つと、加法定理の形にも理由が見えます。
この記事は文部科学省の高等学校学習指導要領・教科書関連資料で学習範囲を確認し、説明と例題は独自に作成しています。